サウンド志向が強い学生に歌詞の話をする時、本当に伝わっているのかどうしても不安になります。
「普段、音楽のどんな要素が心に残っている?」
「うーん…メロディーかなぁ?ビートかなぁ?」
「君は?」
「やっぱ、雰囲気かなぁ~。」
「なるほどなるほど…」
確かに、最初に耳に届くのは、おそらく編曲的な部分かも知れません。僕らが編曲する時は、いかにリスナーの耳に留まるかを最重要視します。これは感性ではなく、技術的な計算の部分です。けれども、同じ曲を何度か聴いていると、次第にその曲の風景が頭の中に描かれていくことが分かります。そこで無意識に心の中に入って行くのが、歌詞の世界だと思います。極論すると、それが歌である以上、歌詞が届かないと意味がない。
僕の経験から、さらに極論すると、
「歌がうまくない人の方が、歌詞が届きやすい。」
そんな感覚を持っています。猛烈に声に力がある人は、その声自体が素晴らしいカラーを持っています。逆に言うと、歌詞が無くても聴けてしまう。これが、僕は非常に危険だと思うのです。
例えば、サポートさせていただいている米澤粋夏さん(試聴はこちらから)。彼女など、猛烈に歌がうまい系の代表選手。けれども、その圧倒的な声ゆえに、ともすると歌詞が届かない危険性をいつもはらんでいます。そこで、彼女がいつも気を使っていること、それは、"ブレス(息継ぎ)"です。仮に上記試聴サイトの"A Way"という楽曲を、
♪ 叫ぶ~力が~まだ少し~あるのなら~♪
と歌ってしまったら、それを聴いた人々はきっと、
「ああ、うまいなぁ~」
で、終わってしまう。けれども、
♪ 叫ぶ~、力が~、まだ少し~、あるのなら~、♪
と、全てにブレスを入れて歌いまわしているから、その意味が心にグッと入ってくるんだと思います。
皆さんも、カラオケなどで試していただけたら幸いです。
歌がうまい必要は全くない。その歌が、人に届けばいいんだ、と。
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